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晩酌を楽しむような気持ちで日々の思いを書き綴りたいと思います。


by icewine5

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「アラビアのロレンス」完全版

ようやく「アラビアのロレンス」完全版・ニュープリントバージョンを新宿のテアトルタイムズスクエアで観て来ました。

アラビアのロレンス 完全版 [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

スコア:

以前のエントリーでも書いたように、これまでの人生で最も感銘を受けた映画です。
テレビ放送の録画は何度も何度も観たものの、これまで映画館で見る機会がなかったのですが、ようやく念願がかないました!
もう最高に幸せ。大画面で見る雄大な砂漠や戦闘シーン、モーリス・ジャールのあの音楽。そして、何よりもロレンスを演じる主演のピーター・オトゥールやシェリフ・アリを演じるオマー・シャリフの美しさといったら・・・今年最後で、最高の贅沢でした。

休憩を挟んで4時間弱。この映画はやはり映画館で観てこそ、本来の価値が分かるというのを身をもって体感しました。
映画館だと最初の4分間の序曲(映像無し)もちゃんとあるんですよね。もうこの序曲だけで、なんか涙腺が緩んできている自分。
終わったあと、拍手をしているお客さんがいましたが、その気持ちも分かります。

監督:デビッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
脚本:ロバート・ボルト
音楽:モーリス・ジャール
出演:ピーター・オトゥール(T.E.ロレンス)/アレックス・ギネス(ファイサル王子)/オマー・シャリフ(アリ首長)/アンソニー・クイン(アウダ・アブ・タイ)/ジャック・ホーキンス(アレンビー将軍)/アーサー・ケネディ(ベントレイ)/クロード・レインズ(アラブ局長ドライデン)/ホセ・ファーラー(トルコ軍司令官ベイ)


主人公のトーマス・エドワード・ロレンスは、オックスフォード大学出身の考古学者であり、第一次世界大戦時には英国陸軍将校として、アラブのハシム家の王子ファイサルの軍事顧問となりアラブ反乱軍の指揮をとった人物です。
ストーリーは以下の通り。
第一次世界大戦下、ドイツと手を組んだトルコ帝国の圧政下にあったアラブの独立に燃えたT.E.ロレンスは、独自のゲリラ隊を指揮し、アラブの救世主と称えられるようになる。しかし、やがて英国軍上層部に利用されていたことを知る。そして、味方と思っていたアラブ人たちもまた青い目、白い肌のロレンスを裏切っていくのだった…。 (「アラビアのロレンス【完全版】デラックス・コレクターズ・エディション」のAmazon商品説明より引用)
歴史上に実在した人物を扱った映画やドラマではどうしても史実との違いを指摘されますが、この映画にしても、実際のロレンスの人となり、英国陸軍での位置づけやアラブで果たした役割、出来事の順番など、史実とは異なる面も色々あります。

ですが、映画作品としては最高傑作のひとつであるのは間違いないと思います。
ロレンスの複雑な生い立ちからくるコンプレックスと不安定な内面心理、英国とアラブの板ばさみとなった苦悩、そこはかとなく漂う同性愛的傾向とサディズム、マゾヒズムの描写が、この映画を単なる戦争活劇とは一線を画したものにしているように思います。

「アラビアのロレンス」完全版_f0059671_0143324.jpgパンフレットによると、脚本家のロバート・ボルトを起用した理由について以下のように書かれています。
 「スピーゲルとリーンは、所謂血湧き肉踊るという作風の脚本家をさけて、感情の分析観念の対立を描くことで名を知られた劇作家を依属した。」 

ちなみに史実を比較的忠実に追いつつ、ロレンスの精神的な内面世界を丁寧に描いた作品は、神坂智子さんの漫画「T.E.ロレンス」があります。
(同性愛的な描写もあるので、評価は分かれるでしょうけれど・・・)
なぜかシェリフ・アリの髪型が三つあみだったりするのが不思議です^^;

さて、ストーリーはもう熟知しているのですが、映画館で見ると新たな気づきや今までとはまた違った感覚を味わえてよかったです。

約4時間の映画の中で女性の登場人物はなし。女の入り込む余地の全く無い男の世界でありながら、この映画に繊細さを感じるのは、オトゥール演じるロレンスの存在故でしょう。
ロレンスは映画の中ではアラブを独立へ導こうとする英雄であり、ヒーローです。
ですが、彼の屈折したデリケートな内面、女性的な柔らかい物腰やしゃべり方、ムサイ髭面のアラブの男どものなかに一人、金髪碧眼で白い衣装に身を包んだロレンスは映画では間違いなくヒロイン的な位置づけ。

そのヒロイン的なロレンスの対極に位置する男性的な存在が、オマー・シャリフ演じるハリト族の首長、シェリフ・アリ。
もうね~、痺れるほど格好いいです!
高貴で誇り高く、情熱的かつ冷静、ロレンスに傾倒してからの抑制のきいた彼に対する愛情も全てが惚れ惚れします。

遠い砂漠の向こうから登場する有名なシーンの格好良さはもちろんのこと、ファイサル王子のテントに黒い衣装の裾をひらめかせながら入ってきたアリが立ったまま昂然とロレンスを見おろす場面のいかにも気位の高そうな様子や、最後にロレンスと別れる際のお辞儀のなんとも優雅なところとか・・・挙げだすとキリがありません。
黒い衣装も家のテレビの小さい画面ではよく判別できなかったのですが、映画館の大画面で見ると、実は一族の長らしい上等な質感の生地なんですね。
沢山着込んでいるときは着膨れして膨張して見えるんですが、上着を脱ぐとウエストがしまっていて後姿がすんごいセクシーなんだなw
とにかくアリの黒い衣装がロレンスの白い衣装との対比で男性的な面を象徴しているように思います。

この二人の距離感の変化、及びロレンスの名声の高まりと地位の上昇と、彼の精神状態の変化を観察してみると興味深いものがあります。
アリがロレンスに傾倒し始めたのと反比例して、そして、武勲により陸軍での階級が上がっていくにつれ、ロレンスの精神状態は不安定な方向へ向かっていく・・・

アリがロレンスに心酔する転機となるのが、アカバ砂漠での決死の部下の救出。
この映画の中盤、アカバ攻略が一見すると物語の絶頂、ロレンスにとって最も自信に満ちた瞬間であるように見えるんですが、実は彼の得意の絶頂、カタルシスは恐らく、それよりも前、部下の救出から戻ってきたロレンスにシェリフ・アリが水を差し出す瞬間なんじゃないでしょうか。
不可能な事は無いという自信過剰は、アカバ攻略を目前にして、せっかく救った部下を自らの手で処刑しなくてはならなくなったところから、急速に崩れていきます。
その後、自分自身とは離れたところで、名声と虚像が一人歩きしていくと同時にイギリスの二枚舌外交とアラブに対する思いの狭間で苦しむロレンス。
この名声の一人歩き状態は彼が軍隊を離れた後もつきまとっていくわけです。
そんな彼を気遣わしげに見守るシェリフ・アリがまた切ない・・・

シェリフ・アリ以外の登場人物もみんな、本当に素晴らしい。イギリス陸軍将校たち、老練で狡猾、王者の風格漂うファイサルなど、最高のキャストだと思います。

そして、ホウェイタット族の首長・アウダ・アブ・タイ。
今回、改めて、この人物の描き方に感心しました。
彼は粗暴で私利私欲で行動する単純な男のようでいて、実は、非常にするどい観察眼を持っているのですよね。
写真を撮られると魂を抜かれると本気で思っていて、アメリカ人記者のカメラをぶっ壊したり、トルコの列車爆破で戦利品の家畜を前に超ご機嫌になったりと、かわいいオヤジさんな一面もある一方、時々、すばっと核心をつく発言をするところから、彼がただの粗暴なだけの男ではないことが分かります。

特に最後、ダマスカス入城後、アラブ国民会議の夢破れて、ロレンスと別れるシーンのアウダの言葉はどれも含蓄があって考えさせられます。
もう二度と砂漠は見たくないというロレンスに対して、”There is only the desert for you.”と、彼の居場所がイギリスにはないことを指摘。
そして、同じくロレンスに別れを告げたアリがアウダと廊下で話す場面。
アウダは涙を流すアリに向かって”You love him.”とアリがロレンスに対して友情以上の感情を抱いていることをはっきり見抜いているんですよね。
そして、去り行くアリに”I’ll tell thee what being an Arab will be thornier than you suppose,Harith.”という言葉を投げかける・・・
「アラブ人であるということは一生、いばらの道を歩み続けること」、現在の中東諸国の状態を見るにつけ、アウダの言葉は深いなあと感じ入ります。

映画の中にも出てきたように、英・仏・露でサイクス-ピコ協定を結ぶ一方、アラブに対してはフセイン-マクマホン協定を結ぶといったイギリスの二枚舌外交が今の中東の混乱の発端の1つにもなっているのですよね。
ロレンスが軍事顧問をしたファイサルが国王に即位したイラクもその後のことを考えると、アウダの言った茨の道は現在も続いているわけです。

まだまだ、書きたいことはつきないのですが、これぐらいにしておきます。
時間とお金があったら毎日通いたいぐらいです。
2月14日からはラ・ボエームが公開らしいので、それまでのどこかで少なくともあと1回は絶対に観にいきたい!自分の勝手な好みでいうと、ラ・ボエームはいいから^^;そのかわりに「アラビアのロレンス」をずっと公開し続けてほしいぐらいです。
by icewine5 | 2008-12-30 00:28 | 映画