人気ブログランキング | 話題のタグを見る

晩酌を楽しむような気持ちで日々の思いを書き綴りたいと思います。


by icewine5

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

以前の記事

2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月

カテゴリ

全体
日々の雑談
歴史・新選組関連
観劇・音楽鑑賞・博物館
音楽
読書
読書(歴史関連)
新聞・雑誌感想
テレビ(ドラマ)
テレビ(ドラマ以外)
映画
娯楽お出かけ
旅の思い出:国内
旅の思い出:海外
レストラン
アフタヌーンティー
飲食物(その他)
仏教
マンション購入
ブログ

最新のトラックバック

ライフログ


アラビアのロレンス 完全版 [DVD] [PR]


生きて死ぬ智慧 [PR]


NHK探検ロマン世界遺産 マチュピチュ [PR]


世界遺産 ペルー編 [PR]


マチュピチュ [PR]


オリバー・カーン自伝 ナンバーワン―私なら、こう生きる!21のセオリー [PR]


武揚伝〈1〉 [PR]


新選組!! 土方歳三最期の一日 [PR]


「新選組!」オリジナル・サウンドトラック第二集 [PR]


憂國 [PR]


森鴎外の系族 [PR]


パリ・オペラ座バレエ「パキータ」全2幕(ラコット版) [PR]


エトワール デラックス版 [PR]


不都合な真実 [PR]


ベルサイユのばら(5冊セット) [PR]


アラビアのロレンス【完全版】 デラックス・コレクターズ・エディション [PR]


チェーホフとの恋 (チェーホフ・コレクション) [PR]


NHK からだであそぼ 決定版 歌舞伎たいそう いざやカブかん! [PR]


蒼天航路 (11) (講談社漫画文庫) [PR]


バッハ:マタイ受難曲【SHM-CD仕様】 [PR]


F.リスト(1811-1886);十字架への道 [Import from France] (Liszt: Via Crucis) [PR]

お気に入りブログ

雲母(KIRA)の舟に乗って

検索

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧

愛陀姫

週末、八月納涼大歌舞伎の第三部を観にいきました。
お目当ては、新作歌舞伎「野田版 愛陀姫」。

前のエントリーでも書いているのでしつこいですが、ヴェルディの「アイーダ」は私の最も好きなオペラ作品です。
学生時代に図書館で借りたCDをカセットテープに録音して、歌詞対訳を読みながら何度も何度も繰り返し聴いて早20年?
他のオペラだと、家で聴く場合、自分の好きな箇所しか聴かないから、数回通しで聴いたぐらいでは、覚えてない部分も沢山あるのですが、アイーダは最初から最後まで全てが大好き。私にとって別格のオペラです。

というわけで、本当に思い入れの深い大好きなアイーダが歌舞伎ではどんな風に演出されるのか、ワクワクしながら歌舞伎座へと向かいました。
去年観たシェイクスピア作品を元にした蜷川さんの「NINAGAWA十二夜」がものすごく良かったのもあって、同じく西洋の名作を元にした作品だし、野田秀樹さんはこの素材をどんな風に扱うのか、かなり期待大だったのですが・・・

正直、期待外れでした。
昨今のスピリチュアルブームとやらの虚像を痛烈に皮肉った点だけは拍手喝采なのですけど。
以下、歌舞伎観劇歴の短い人間に何が分かるのかとご批判を受けるかもしれないですが、でも率直に書きます。
(生意気な事を言っていますが、どうかご容赦ください。)



期待しすぎていたせいもありますが、非常に中途半端で完成度の低い作品だと思いました。
私だけががっかりしたのかなと、観た後に愛陀姫のレビューを書かれたブログめぐりをしてみたのですが、ご覧になる方によって評価が両極に分かれるようですね。
絶賛もあれば、かなりの酷評もあり。
どうもオペラのアイーダに馴染みのある方は低めの評価をされている場合が多く、観たことがない方は良かったと評価される傾向があるよう見受けました。

確かに今回の作品はオペラのアイーダをあまり知らなければ、それなりに楽しめる作品だったようには思います。
ですが、なまじオリジナルを知っていると、元の曲の中途半端な使われ方やオペラの歌詞を単に歌舞伎風に翻訳しただけの台詞が、ものすごく陳腐でしょぼい感じに聞こえてくるんですよね。

アイーダはあのヴェルディの豪奢でドラマチックな音楽をオペラ歌手の歌唱力でもって情熱的に歌い上げるからこそ、作品として生きてくるのであって、それを単にオペラのストーリーを要点のみ絞って歌舞伎にしただけ(と思えてしまう。)では、原作の良さと歌舞伎ならではの良さのいずれも出てこない陳腐なものになってしまうと思うのです。

音楽も「清きアイーダ」や「いざ、神聖なナイルの岸辺に」などが流れてましたが、妙にチープな感じになっちゃっている・・・

特に愛陀姫、濃姫、木村駄目助左衛門の3人については、彼らの関係性も台詞も、オペラの歌詞をそのまま歌舞伎風に変えただけで、忠実といえば確かにそうなんですが、観ているうちに、「これって手抜きじゃないの?」と思えてくるぐらいでした。
3人の台詞の合間のトランペットの入り方までオペラのまんま。

なので、オリジナルとは別物だと思って観ようとしても、彼らが話すたびに、頭の中にどうしてもドミンゴやリッチャレッリの歌声とヴェルディの音楽が浮かんきてしまうのです。
目の前で歌舞伎を観ているはずなのに、脳内のオリジナルの印象の方が強くなってしまって、妙にモヤモヤしたもどかしさを上演中ずっと感じていました。

例えば、第二場の愛陀姫、駄目助左衛門、濃姫がそれぞれの内心を吐露する場面。
オペラだと第一幕第1場:メンフィスの王宮内のアイーダ、ラダメス、アムネリスの三重唱にあたる部分。
このシーンもあのヴェルディの音楽があってこそ、そして3人が同時に歌うからこそ、彼らの不安と焦燥感が表現されるのであって、それが歌舞伎で台詞だけになってしまうと、元々ストーリーが単純なだけに、本当、盛り下がってしまいます。

こうやって1つ1つの場面を取り上げていったら、キリがないのですが、ここでふと、なぜ今回、ヴェルディの「アイーダ」だったんだろう・・と気になりました。

モーツァルトの喜劇なんかは、もしも歌舞伎にしたらとても馴染み易いと思いますが、あえてイタオペのそれもヴェルディの作品を歌舞伎化するのは一種の挑戦であり、そこに野田さんの自信とこだわりがあるんでしょう。

オペラ、特にイタリアオペラはストーリーそのものは単純、ソプラノとテノールの恋路をアルト、メゾソプラノやバリトンが邪魔をするというのがほとんどなので、結局、それを表現する音楽、情熱的な歌があってこそなんですよね。

だから、歌舞伎にするにあたり、音楽の要素が無い部分をいかに補い、歌舞伎ならではの表現、演出にするかが、作品として完成度の高いものになるかどうかのキモだと思うのです。
きっと野田さんは、「アイーダ」を材料に、素人には思いもつかない料理をして、オリジナルの良さと歌舞伎ならでは良さを見事に混合した表現で、観客をアッと言わせてくれるのだろうと、私は期待していました。
ところが、実際に観てみると、オリジナルとほとんど同じ台詞、流れで話が展開していくのには、これじゃ、ただ粗筋を追ってるだけなんじゃないの・・・と、逆の意味で意外でした。

もう1つ。
これはもう他のブロガーさんも書かれているのをあちこちで見かけましたが、中途半端にアイーダの音楽を使っているのに、なぜ、最後だけマーラーの交響曲第5番4楽章アダージェットになるんでしょう?
なぜ、ラダメスとアイーダの二重唱「おお大地よ、さらば、さらば・・・」ではなかったんでしょう?

きっと、凡人には分からない特別な意味があるのでしょうけれど、ここでマラ5を使う意味は理解できませんでした。
でも、これってすごく気になるのです。もしかしたら、「なんで最後だけマラ5なのか?」と観客に疑問を持たせることそのものが野田さんの意図するところなのかもしれませんが・・・

不満ばかり書き綴ってしまいましたが、もちろん、良かった点もありました。

インチキ祈祷師の荏原と細毛w
祈祷師二人に関しては、原作の祭司ランフィスとは異なるキャラクター設定で、作品内での彼らの位置づけも独自のものだったし、野田さんの意図するところが非常に分かりやすかったです。

それにしても、ここまであてこすって名誉毀損にならないのか心配なくらいですが(笑)、今、流行のスピリチュアルブームが、いかに虚像であり、インチキであるか、またそれに操られてしまう愚かな人間を見事なまでに風刺してくれて、その点については非常に爽快でした。
スピリチュアルだかオーラだか知りませんが、要は誰にでも当てはまるようなことを自分だけに向けられた事象だと思ってしまうバーナム効果に過ぎないということ。
この点を今回の作品の中で見事に表現している点はスゴイと思います。

とまあ、エラそうな事をあれこれ書いてしまいました。
まあ、これだけ長々と書きたいことが出てくるというのは、期待外れではありましたが、それなりに気になる作品だったということなのかな。
海外の作品を取り込んで、新しい歌舞伎作品を創作することそのものは、面白い試みですが、素材の良さを生かすと同時に、オリジナルとは別の独立した、歌舞伎でなくてはならない必然性が感じられる作品を観てみたいと思います。
by icewine5 | 2008-08-21 02:20 | 観劇・音楽鑑賞・博物館