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晩酌を楽しむような気持ちで日々の思いを書き綴りたいと思います。


by icewine5

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マリア・カラスの真実

ユーロスペースで公開中のフィリップ・コーリー監督の「マリア・カラスの真実」を観て来ました。

20世紀最高の歌姫、マリア・カラスの生涯を描いたドキュメンタリー映画です。
マリア・カラスの歌はもちろん聴いたことがありますが、彼女の詳しい生い立ちや私生活についてはあまりよく知らなかったので、非常に興味深く観ることができました。

ギリシャ移民の子供としてニューヨークで生まれた彼女が歌姫として成功に至る道すじ、その過程において彼女の人生を左右することになる多くの人々との出会い、私生活では、母との断絶、30歳年上のジョヴァンニ・バッティスタ・メネギーニとの結婚と離婚、オナシスとのスキャンダル、孤独な晩年など、歌姫であると同時に、一人の生身の人間としてのマリアの姿を描き出した作品でした。
また、マリアが本当に意味で活躍していた期間は1950年代半ばから60年代前半の10数年と、意外と短い期間であったことも初めて知り、この世界で実力を保ち、名声を維持し続けることがいかに厳しいことなのかがよく分かりました。

映画冒頭は、1958年12月、マリア・カラスがパリ・オペラ座デビューを飾るところから始まります。
ブリジット・バルドーや仏大統領、チャップリンやジャンコクトーなど、彼女のパリ・デビューに集まった面々の凄いこと・・・

冒頭に出てきた人達以外にも、彼女の人生に多大な影響を与えた人物が映画の中には何人も登場するのですが、それがまたとにかく凄い。錚々たる面々です!
マリアと愛人関係にあったアリストテレス・オナシス、マリアのためにオペラを演出したルキーノ・ヴィスコンティ、グレース・ケリー、ピエル・パオロ・パゾリーニなどなど。

映画はマリアの絶頂期ともいえる華やかなパリ・デビューから1923年の出生までさかのぼります。
18歳でのデビュー後も決して平坦とはいえない道のりで、途中で母との断絶など悲しい出来事もありましたが、ミラノ・スカラ座の女王になるまでの出世物語は観ていて面白かったです。
ただ、彼女の成功は、もちろん本人が生まれながらに持っていた才能によるところも大きいですが、努力の努力を重ねたものだったのがよく分かりました。
それと同時にやはり成功する人に共通していえることですが、運と人脈に恵まれていたこと。それもある意味、実力のうちなんですよね。

1952年には、モーツァルトの「後宮からの誘拐」でコンスタンツェを演じて、どの歌でもよく歌えることを証明し、スカラ座のスターになるわけですが、問題は彼女のルックス。
当時の彼女は体重が100キロを越えていたそうで、ダイエットで40キロの減量に成功します。
20代のマリアは大柄でもっさりした田舎娘だったのが、ダイエット後は、本当に見違えるほど美しくなったのには驚きました。
美を追求した30代の方が断然、若々しく見えるぐらい。プッチーニの孫娘のデザイナー?の協力も得て、服装も急激に垢抜けて、ファッション・アイコンとしても注目されるようになります。
歌手としての名声もあがり、上流階級の仲間入りをした彼女が、年齢を重ねるほどにほっそりとエレガントになっていく姿は素敵でした。

スカラ座の大株主であり、ミラノ公の一族でもあったヴィススコンティとオペラや仕事について話すマリアはまさにミラノ・スカラ座の女王様の風格で、とっても格好いいです。
この対談がいつ撮られたものなのかよく分かりませんでしたが、ヴィスコンティが彼女のために演出を多く手がけた1950年代後半の絶頂期かと思われます。

ヴィスコンティとの会話の中で、マリアは「椿姫」と「ノルマ」がお気に入りだと話していました。どちらも愛のために自分の人生を犠牲にする女性だからというのが理由だそうで、後から振り返ってみると、その後の彼女の人生を暗示しているようでもあります。

ヴェルディ:歌劇「椿姫」全曲

カラス(マリア) / EMIミュージック・ジャパン


ヴィスコンティが演技指導をしている映像など、お宝映像も盛りだくさんでした。
ヴィスコンティ演出でマリア・カラス主演のオペラとは、なんて贅沢な!生で観られたお客さんは幸せだなぁ・・・

余談ですが、ミラノ・スカラ座に集まる正装したお客さんのゴージャスさにもため息が出てしまいました。

ただ、彼女の絶頂期もそう長くは続かず、メトロポリタン歌劇場支配人との見解の違いによる契約破棄や断絶していた母からの中傷や体調不良のために公演最中で放棄したことに対して聴衆の批判など、マリアが完璧主義者であるがゆえに生じる数々の摩擦には、見ているこちらもハラハラさせられました。

そんな時に彼女の前に現れたのがアルキメデス・オナシス。
オナシスの誘いに乗って彼のクルージング船に乗り込んだマリアはその後、オナシスと愛人関係となり、30歳年上の夫との離婚。ここでもマスコミに批判されることになります。
ただ、彼女自身はこの映画を見る限り、本気で一途にオナシスを愛しているのがわかるだけあって、それが逆に痛ましいのです。
オナシスの子供を妊娠、早産し、数日後にその子供が亡くなったことも初めて知りました。

映画を見ていてふと思い出したのが、マリア・カラスと同様、不世出の天才として名高いチェリストのジャクリーヌ・デュ・プレ。
彼女を描いた映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」で姉ヒラリーが「妹はチェロの天才だった。でも、人生の天才ではなかった」と言っていましたが、人生の天才ではなかったのはマリア・カラスもそうだよな~と、この二人にどこか共通点があることを思わずにはいられませんでした。
音楽家としては最高の栄誉を得て、成功したわけだけど、生き方については、よく言えば一途で純粋、率直に言うと、あまりにも不器用。
それゆえに、愛する人に裏切られて精神的にボロボロになっていった晩年のマリアの姿は見ていて痛々しかったです。

1966年、オナシスと結婚できると思って、ギリシャ国籍を取得したことを嬉しそうに記者に話していたのに、その後、オナシスはジャクリーン・ケネディと電撃結婚してしまう。
要するにオナシスに二股をかけられていたのに、それでもマリアは彼を忘れられなかったようです。第三者の自分からすれば、「こんなダメンズはやめとけよ!」と冷静に判断できるんですがね~
オナシスが亡くなった後、それまで美しかったマリアが急に老け込んで、50代とは思えないおばあさんになってしまったのもちょっとショックでした。

50代のマリアがTVの取材の中で、「自分は若い人たちにアドバイスしたいと思っているのに、誰も自分に教えを乞おうとしない。誰も自分を必要としていない。」といった趣旨の発言をしていたのが印象に残っています。
人間、どんなに多くの人に賞賛されようとも、やはり自分を愛し、必要としてくれる人がいないことほど寂しいものはないのですよね・・・
1977年に孤独死したマリアの遺品はオークションにかけられ、残ったのは彼女の歌声だけだったというナレーションで不覚にも涙がこぼれそうになりました。

今まで知らなかったマリア・カラスの人となりに触れることができてよかったです。
by icewine5 | 2009-05-05 23:50 | 映画