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晩酌を楽しむような気持ちで日々の思いを書き綴りたいと思います。


by icewine5

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モーリス・ジャールの軌跡

シネマアンジェリカで、「モーリス・ジャールの軌跡」 を見てきました。
今年3月に亡くなったモーリス・ジャール氏の業績を本人や関係者らの証言で振り返るドキュメンタリーです。
昨年秋の大阪ヨーロッパ映画祭はデビッド・リーン監督の生誕100年や映画音楽誕生100年ということで、このドキュメンタリーは日本初上映だったそうでとても興味があったのですが、残念ながら行けませんでした。
ジャール氏が映画祭の名誉委員長として来日したときの様子を後日、ネット上の動画で見ましたが、80過ぎにも関わらず元気そうに話していらっしゃる様子だったのに、その時、既に癌で闘病中だったのですね。
今回、追悼上映が大阪に次いで、東京でも開催されると知って、早速行ってきました。

モーリス・ジャールといえば、私にとってはもちろん「アラビアのロレンス」と「ドクトル・ジバゴ」です。

アラビアのロレンス 完全版 [DVD]

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ほんの少しのシーンとはいえ、再び、映画館の画面であの雄大な砂漠の映像と音楽に浸れたのは幸せでした。
ロレンスとジバゴ関連のエピソード目当てで見ましたが、それ以外にも彼の長いキャリアの中で作られた数々の名曲についての本人や関係者のインタビューも非常に面白く、あっという間の80分でした。

冒頭、インタビューで彼は「ピアニストは音楽を指先でつくりがちだが、本来、音楽は頭とハートでつくるもの。そういう意味で自分はうまいピアニストでなくて良かった。」と話していたのが、まず印象に残っています。
演奏家と作曲家の違いは確かにそこにあると思います。
特に、ジャール氏のように映画音楽を作る場合、脳内で映像のイメージをふくらませ、監督の意図するところを汲み取る想像力や、それを音楽として映像と一体化して、観客の心に訴える表現力は普通の作曲家以上に必要だと思います。

そんな彼が音楽の道に進もうと思ったのは、リストのハンガリー狂詩曲2番を聞いたのがきっかけだそうです。

リスト:ハンガリー狂詩曲第2番

ストコフスキー(レオポルド) / BMG JAPAN

リストは私も大好きな作曲家の一人。そういわれてみると、確かにリストの華麗な音楽がモーリス・ジャールの後の映画音楽に通じているような気がしてきました。

さて、今回のドキュメンタリーのお目当てだった「アラビアのロレンス」の音楽制作関連のエピソードから。
モーリス・ジャールがロレンスの音楽を全て担当することになった経緯は面白かったです。
当初、プロデューサーのサム・スピーゲルは音楽の9割を別の作曲家に依頼しており、残りの1割をモーリス・ジャール氏が担当することになっていたそうです。
ところが、別の作曲家が作ったものというのが、イギリスの行進曲みたいなもので、デビッド・リーン監督はこれじゃ全然駄目だと言い、ジャール氏が1節、弾いた例のテーマ曲を聴いて、彼に全てを任せることになったとのこと。この話は今回初めて知りました。

ロレンスとジバゴに出演したオマー・シャリフも思い出を語ってくれていました。(←これも今回のお目当ての1つ♪)
「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」以来、久しぶりに彼がフランス語で喋っているのも聞けてラッキーでした。そういえば、このお方は、家庭でおフランス語を話すようなエジプト上流階級の出身でいらっしゃいましたw

話してくれた内容は、これまでにもインタビューなどで言っていたこととほとんど重複していて、ロレンスに関してはモーリス・ジャールの音楽が素晴らしかったこと、無名の新人が主役で、恋愛もアクションも無く、砂漠をラクダが走っているだけの映画だったが、脚本もすばらしかった云々。
「ドクトル・ジバゴ」については、音楽がとてもセンチメンタルだった上に、自分の演技もセンチメンタルだったといった趣旨のことを語っていました。

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また、生前のデビッド・リーン監督をはじめ、ピーター・ウィアー監督やアドリアン・ライン監督など、多くの人が彼との映画音楽制作の思い出を語っていました。

色んな監督のインタビューがあったので、誰が言ったのかちょっとごちゃ混ぜになっていますが、だいたい共通しているところでは、モーリス・ジャールはシーンごとの音楽ではなく、映画全体をトータルで捉えて曲を構築するという点でした。
そういう意味ではオペラコンサートのようなもの、これはデビッド・リーン監督が言っていたことで、ロレンスかジバゴの特典のインタビューでも同趣旨のことが語られていました。

あとは、確かピーター・ウィアー監督だったかと思いますが、彼の音楽は雄大な風景を想起させる、映像はあくまでも2次元の世界だが、音楽がつくことで3次元の世界になる。これは激しく納得。
ロレンスやジバゴ以外に自分が見ていない映画で、彼が作曲した曲がいくつも流れましたが、砂漠とか草原とか、とにかく広大な景色に合うドラマチックな音楽が本当に素敵で、どれもこれも見てみたくなりました。

それ以外のエピソードでは、ジャール氏が敏感に監督の表情を読み取って、意図するところを汲み取り、いくつものパターンをピアノで弾いて試してくれる姿勢、作曲にかける集中力がすごい、本当にプロだった、本人が何と言おうと彼は優れたピアニストでもあった、などなど。

モーリス・ジャール本人が作曲の思い出話を語ってくれているのも、もちろん興味深かったです。
気心のしれたデビッド・リーンとの仕事については、彼の場合、音楽的なことはあまり言わず、情景やイメージを伝えてきて、そんなイメージに合う音楽を要求してきたとのこと。
彼のイメージを汲み取って、ピアノで「こんな感じはどうでしょう?」といくつものパターンで引き分けたりしながら相談しているシーンなど見ものでした。
「ドクトル・ジバゴ」では、最初、ロシア的な音楽を用意したそうですが、彼は納得せず、試行錯誤の結果、あまりロシア的でない旋律にバラライカをうまく使うことであの「ラーラのテーマ」が出来たそうです。
こういう制作話を聞くと、また改めて映画を見てみたくなってきます。

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リーン監督の作品のうち、「インドへの道」と「ライアンの娘」は未見ですが、これも音楽がつくられる経緯がなかなか面白かったので、そのうち見てみるつもり。

あとはルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に堕ちた落ちた勇者ども」も見ないと!
この映画の作曲依頼があった時のことについてもインタビューの中で少し触れていて、ちょっと興味をそそられました。

地獄に堕ちた勇者ども [DVD]

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依頼があったので早速ローマに飛んだところ、ヴィスコンティは不在で何日経っても現れない。「ヴィスコンティさんには一体、いつ会えるのか」と聞いたところ、「彼は今、ウィーンでオペラのリハーサル中だ」とのこと。これについて「自分は仕事をしにきたのであって、オペラや音楽鑑賞のためにローマに来たのではないのに・・」と言っていましたが、これについてはその後、どうなったのかもっと詳しく聞きたいところでしたが、次のエピソードにうつってしまいました。

インタビューを通して、これだけ有名に映画音楽界に無くてはならない存在となってからも、非常に謙虚で研究熱心な人柄が伝わってきました。
既存の作曲方法や楽器にこだわらず、新しい手法や世界各国の様々な楽器を使い、それぞれの映画にあった音楽をつくりだす事へのこだわりは凄くて、職人気質な人なのがわかります。

また、本当に謙虚で、「本当に自分は音楽のことを熟知しているのだろうか」と自問する姿勢、独りよがりにならず、監督やその映画関係者が求める音楽について、いつも彼らと相談して、意向を確かめながら作曲する姿はさすがだと思います。
こういう人だからこそ、多くの監督が彼に仕事を依頼し、素晴らしい映画音楽が生まれたのでしょう。

一方で、「駄目な映画はいくら良い映画音楽をつけても駄目だ。逆に良い映画であっても音楽によって台無しになることもある。音楽が必要の無いところにも音楽をつけたがる監督もいる。それは作曲家の責任ではなく監督の責任だ。」との見解も示していました。

最後はやはり「アラビアのロレンス」のコンサートで彼が指揮をしているシーンで終わりました。素晴らしい映画音楽を数多く作ったといえども、やはり代表作はこれになるということですね。
コンサートの観客と一緒になって拍手をしたくなる素敵なドキュメンタリーでした。
by icewine5 | 2009-06-28 17:25 | 映画