晩酌を楽しむような気持ちで日々の思いを書き綴りたいと思います。


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佐々木譲 「武揚伝」読了

春から読み始めた「武揚伝」をゴールデンウィークにようやく読み終わりました。
感想を書く暇がなくて、ずっと放置状態になっていましたが、さすがに1ヶ月経つと、徐々に記憶が薄れてつつあるので、忘れないうちに感想です。

榎本武揚の前半生を描いたこの小説、久しぶりに充実した内容の作品に出会えて非常に満足しました。
小説全体の書きぶりについては、詳細に描かれたドキュメンタリー小説という印象を受けました。NHKのその時「歴史が動いた」の活字版といったところでしょうか。

ここでの榎本さんは、読まれた方のレビューをいくつか拝見させて頂きましたが、皆さん、書かれているように「完璧な理想の人間」です。
小説の場合、多少の性格的欠点となるようなエピソードなども踏まえつつ、描くことで人間臭さを出すことはよくありますが、佐々木譲氏はあくまでも完璧なヒーロー榎本武揚を描くことを貫いています。
その点で、私は逆に新鮮さを感じました。

登場人物の欠点も紹介しつつ、愛すべき人間臭さを表現するには、実はかなりの高等テクニックが必要で、例えば司馬遼太郎はそれが本当に上手いなあと思いますが、下手な作家がそれをすると見事にイタイ事になってしまいます。
その点、佐々木譲氏の「武揚伝」の場合、榎本さんを中途半端な人物像にしなかった事によって、潔い榎本像を浮き彫りにすることに成功していると思います。

榎本さんとその仲間たちが皆、文句なしに「いいヤツ」である一方、彼らを際立たせる究極の敵役として、姑息な勝海舟、口先だけの駄目男の徳川慶喜が対置されていて、私としてはこの二人の嫌なヤツの言動が妙に面白かったりしました。
ヒーロー「榎本武揚」と敵役「勝海舟」&「徳川慶喜」という二項対立が物語全編の軸となっていて、読む側としてはとても分かりやすいです。

ここまで徹底的に「嫌なヤツ」として描かれた勝海舟の描写を読むと、逆に他の小説家は勝海舟をどんな風に描いているのか、また勝海舟視点で書かれた伝記なんかも読んでみたくなりました。

さて、物語の内容についてですが、1~2巻の比較的平和で順風満帆な榎本さんの青春時代は安心して読み進めることができましたが、オランダ留学から帰国後、政治的混乱の中に否応なく身を置くことになった3巻以降は、ヤキモキの連続でした。

読みながら「釜次郎よ、はよう開陽丸で江戸から脱出せんかい!ゴルァ~ッ!!」と、何度、文庫本の中の榎本さんに向かって悪態をついたか分かりません(笑)
今まで、私の知識不足もあって、函館戦争は元々、負けるべくして負けたというイメージがあったのですが、「武揚伝」を読んでからは、天気が味方をすれば、もしかしたら、北海道は今頃、蝦夷共和国だったかもしれない!?、蝦夷に行くにはパスポートが必要だったかもしれない、と本気でそんな気がしてきました。

とにかく、最初の躓きの原因は江戸脱出の日時が悪かったこと。
よりによって、ちょうど嵐とぶつかる日に出航してしまい、開陽丸にダメージを与えてしまった事が最終的な敗北につながっているのが良く分かりました。

「武揚伝」では、そうとは書かれていませんが、これはある意味、榎本さんの判断ミスだったんじゃないかと思います。
勝海舟の本心を見抜けず、仙台、会津での情勢を見極められなかった点は、完璧な榎本さんであるが故に、このことが致命傷になった点を読みながら歯がゆく思いました。
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写真は昨年、訪れた江差の開陽丸青少年センターです。
昨年、ここを訪れた当時は、榎本さんと開陽丸の結びつきにつきがそこまで深いものとは実感していなかったので、単に江差で沈没した榎本さんの船ぐらいの感覚でした。
でも、「武揚伝」を読んで、「開陽丸」は榎本さんの青春そのものだったんだということがひしひしと伝わってきました。

もう1つ「武揚伝」を読んで思ったこと。
榎本さんの江戸脱出から仙台を経て、函館で新政権を樹立した状況は、昭和初期に、行政官僚が軍部を抑えきれずに暴走して関東軍が満州国を作ってしまったいきさつと少し類似しているんじゃないかということです。
もちろん、関東軍が満州国を設立した目的やそこで中国の人々に対して行った事と榎本海軍の目的とする理想の蝦夷共和国とは全然違うものですが、めまぐるしい世界情勢に対応しきれない、ふがいない官僚たちが、血気盛んな軍部の動きを抑えきれなかった点では共通しているんじゃないかと思います。




それ以外に個々の人物で印象に残った人について。
まずは土方さんですが、これぞ「ザ・武士」という非常に男くさい古風な人物として描かれていました。
これも、「良い人グループ」の中での、西洋文明を身に付けたインテリ榎本さんと古風な武士、土方さんという分かりやすい対比でした。
なかなか好印象な土方さんだけど、割と砕けたしゃべりの榎本さんたちの中では「拙者」というのが妙に浮いた感じがして、もうちょっと近代化にも対応した人物っぽく描いてくれても良かったかなと思いました。(でも、ドリーム入りすぎの「歳三姫」な人物像よりはずっといいですが 笑)
イメージ的には神田たけ志著のコミック「北の獅子-真説・土方歳三伝」に近いかな。

あとは、蝦夷共和国幹部の面々。
今までも函館で戦った幕府軍に興味はあったのですが、個々の人物がどんな人だったかについてイメージがあったのは土方歳三、大鳥圭介ぐらいで、それ以外の人は私の中では「その他幹部一同」といった扱いになっていました(笑)
なので、武揚伝で彼らがなぜ榎本さんの元の集まってきたのか、なぜ、こんな辛い戦況の中、最後まで力を合わせることができたのかが、個々人の丁寧な描写によって少しは分かるようになりました。

印象深いのは、なんといっても中島三郎助です。
最初にペリー艦隊と接触し、機転の利いた行動を取った知性派。
穏やかで敬虔、実直な人柄で、上司にしたい人NO1のような人物として描かれた中島さん。
長崎時代は榎本さんが「大人」になる手ほどき(笑)をしてくれたりもしましたが、千代ヶ岱での親子3人の壮絶な最期は、ぐっと来るものがありました。
この小説の中では、土方さんの死より重く描かれているのは、やはり榎本さんとの長い交流があるが故でしょう。
先日の函館では「中島三郎助父子最期の地碑」を訪れましたが、ここは五稜郭とはほんの目と鼻の先。千代が岱が落ちる様子を見ていた榎本さんの心中を考えると辛いものがありました。

最後になりましたが、この本を最初に知ったのは、new雑記帳のrukoさんのレビューを拝読してからでした。【追記:書き忘れていましたが、TBさせていただきました。】
榎本さんの幼年時代から函館戦争までをここまで綿密に描きあげた小説は多分(?)他にないでしょうし、この本を知ることができてよかったです。rukoさん、ありがとうございます。
おかげで、榎本さん、および彼をとりまく人々のこれまで知らなかった人物像をイメージできたし、色々と新たな視点で函館戦争を見ることができた点で貴重な1冊となりました。
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by icewine5 | 2006-06-05 20:53 | 読書(歴史関連)